東京都中野区中野に鎮座する稲荷神社。中野駅南口から徒歩数分の住宅街に静かに佇む小社で、朱塗りの鳥居と囲いに守られた社殿が地域の参拝者に親しまれている。社殿前の幟に「豊川荼枳尼真天」と記されることから、愛知・豊川稲荷(妙厳寺)の御分霊を勧請したものと伝わる。社名「桃園」は江戸時代中期、8代将軍徳川吉宗が鷹狩の地としてこの一帯を愛し、享保5年(1720年)頃から桃の木を植えさせて景勝地「桃園」を造らせた故事に由来する。桃の花が咲く桃園は『江戸名所図会』にも描かれ、当初は将軍の御遊息の場であったが、江戸後期には一般庶民にも開放され、隅田川・飛鳥山と並ぶ江戸花見の名所として賑わい、現代の庶民花見文化のルーツの一つとなった。旧町名「桃園町」はこの景勝地の名残で、桃園稲荷はその記憶を今に伝える貴重な地域史跡である。JR中野駅南口から徒歩3分。